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Channel: 決闘王F.Kのブログ
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キカイダー REBOOTの感想

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 仮面ライダーと並ぶ石ノ森章太郎先生の特撮ヒーローものの代表作が、41年の沈黙を破り映画化されました。映画そのものの企画は5年前から挙げられていたそうで、時間を掛けて作ったスタッフの熱意が伝わります。
 先週は仮面ライダー鎧武に出演し、CMも放映されています。子供の観客も割と来ていましたが、内容はどちらかと言えば大人向けでした。元祖のキカイダーも子供番組にしては大人を意識した演出が盛り込まれており、そういう意味ではキカイダーの系譜を正しく受け継いでいますね。

 ここ最近のヒーロー映画は多数の敵キャラを登場させ、それをヒーローが次々と倒していく事で子供達を楽しませていますが、この映画は違います。敵キャラは巨大重機となったキカイダー最初の敵グレイサイキングとマリ、そしてハカイダーのみ。この内マリとは決着がつかず、ほぼキカイダーとハカイダーの一騎打ちに絞り込まれています。この辺りも子供向けの映画とは違いますね。
 話の内容もジローの葛藤や光明寺ミツコとの心の交流が中心で、子供はちょっと退屈するかも。しかしアクションシーンはさすがに秀逸で、ロボットという設定を活かした容赦無い殴り合い、ジャンプを多用したバトルは見応えがありました。キカイダー、ちょっと吹っ飛ばされすぎだけど。
 後半はキカイダーとハカイダーの戦闘が中心となり、特撮ヒーロー映画としては屈指の長時間バトルになりました。一人の敵とここまで長く戦ったヒーローも珍しいかと。旧シリーズでは決着がつけられなかったキカイダーとハカイダーの戦いを撮りたかったスタッフの気持ち、よーく分かりました(笑)。

 父の死と弟マサルとの関係に悩むミツコ。白馬の王子様を夢見る彼女の前に現れたのは、白馬ならぬ鋼鉄の王子ジロー。光明寺博士から与えられた任務としてミツコとマサルを守るジローに、マサルは父の面影を見て、頑なだったミツコも心を開いていく。ロボットものとしては定番とも言えるストーリーですが、非常に丁寧に描いており共感する事が出来ました。
 良心回路を埋め込まれた事によって、敵を殺す事が出来ないジロー。何かを守る為には何かを捨てなければならない、そんな矛盾に悩み苦しみ、それでもジローは結論を出した。完全な機械になる事を望んだジローが、ミツコを守る為に不完全な機械になる道を選んだクライマックスは、彼が機械を超えた人間の心を身に付けた証です。良心回路を停止させた事によって人間になるとは皮肉な結果ですが、これは愛する者を守る為には時として良心を捨てなければならないという現実への皮肉でしょうか?

 役者の皆さんは全員が見事な演技を見せており、大満足でした。初めての出演作となった入江甚儀さんはアンドロイドという難役を見事に演じており(瞬きの回数に気を配ったり、キカイダーのスーツも着たそうです)、マサル役の池田優斗君は多感だけどジローを慕う素直な少年を演じてくれました。この映画で一番のナイスガイは彼かも。
 特筆すべきはギルバート神崎役の鶴見辰吾さんでしょう。仮面ライダーフォーゼで悪のボスとも言うべき我妻理事長を演じた大ベテラン俳優は、今回も見事な悪役を演じてくれました。ハカイダーの声の演技は本職の声優も顔負けする程の熱演でした。この人の声は悪役に嵌まりすぎる。

 ジローのギターの曲やギルの笛の音色が旧作をアレンジたものだったり、かつてジローを演じた伴大介さんの特別出演などキカイダーファンとしては楽しい映画になりました。「スイッチ・オン」の後に「ワン・ツー・スリー」と言ってほしかったり、マリの変身体を見たかったけど、そこまで望むのは贅沢か。
 激闘の果てにハカイダーに勝利したキカイダーですが、物語はまだ終わっていません。DARKの黒幕である椿谷は生きているし、マリとの決着も付いていない。続編を作ってほしいけど、大人向けの特撮映画なので興行成績がちょっと心配ですね。シャリバンやシャイダーのようにVシネマでもいいから作ってください。


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